味がわからない

人間が生きていく上で一番の楽しみは「食事」ではないでしょうか。異論がある方もいらっしゃるでしょうが、理屈抜きで純粋に考えた場合に「食」の充実に関する優先順位が高い事は間違いないと思います。「食」は見て楽しみ、臭いで楽しみ、食感で楽しみと、五感をフル活用して楽しむものですが、やはりもっとも大切なのは舌で感じる「味」だと思います。その「味」が分からないとなると、「食」の楽しみも半減、いやほぼゼロになってしまうと言っても過言ではありません。 突如生じる味覚障害は、生きていく上での大きな楽しみが減ると言う事となり、かなりのストレスになります。西洋医学で味覚障害を考えた場合、薬の副作用や神経障害、口内炎などの炎症によるものなどと、理由が分かる場合もありますが、どれだけ調べても問題のない原因不明のケースも多くあります。直接命にかかわる症状ではありませんので、研究も進んでいないのかも知れません。一般的には亜鉛不足で症状が発生しているケースが多いとされ、原因不明の場合はとりあえず亜鉛剤を服用するように勧められるそうです。 さて中医学で患者さんが「味が分からない」と訴える時に、まず最初に考えるのは、やはり「脾」の問題です。「脾」とは胃腸のこと。「脾」のバランスの崩れが味覚障害を起こしている可能性が高く、西洋医学的治療で改善が見られなかった場合には中医学でみた「脾」の治療を行ってみると良いでしょう。 まず考えるのが「脾」に、「湿」がたまっていないか、という点の見極めです。「脾」に「湿=余分な水分」が溜まってしまうと、舌に"覆い"が出来たような形となり、味覚が無くなると考えるのです。このような状態は、専門用語で「寒湿困脾」「湿困脾胃」などと呼ばれます。読んで字のごとく、"「湿」が胃腸を困らせている状態"ですね。胃腸は"湿"を嫌う臓器であり、その停滞は様々な症状を引き起こしてしまうのです。よって「味が分からなく」なって「湿」の停滞が疑われるような場合は、「湿」を取り除き「脾」すなわち胃腸機能を回復させる漢方薬を使います。具体的には「星火健脾散(せいかけんぴさん)」や「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」などが合う場合が多いでしょう。また「味が分からなくなる」前の予防法として漢方を使うことも出来ますが、まずは「湿」を溜めないようにする養生を行うことが大切です。例えば、適度に汗をかき、水分代謝を良くする食べ物(キュウリなどウリ科の植物)を多く摂るようにします。また、お刺身などの生もの、アイスクリームなどの冷たいものは控えるようにします。これらは体に"湿"が溜まりやすい方全般の養生法ともなるのです。

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